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進歩性主張の根拠事実_後出し実験データの参酌(第3回)

 前記「日焼け止め剤組成物」事件の判決以降、審査、審判の実務では、明細書に効果に関する記載があれば、それが定性的あるいは漠然としたものであっても、当該効果を裏付ける後出し実験データがある程度参酌されている印象を受けます。しかし、裁判例としては、後出し実験データの参酌を許容しないものも依然として存在する点には留意が必要です(例えば、平成22年(行ケ)第10402号)。

 

 なお、化学・バイオ分野でよくある選択発明の特許出願について、後出し実験データに頼って選択発明の効果を主張するのはリスクがあると考えます。選択発明は出願時において、先行技術に対して異質な効果又は量的に著しく優れた効果を見出して完成されるものです。出願時において先行技術に対する異質な効果又は際立って優れた効果が明細書に記載されていることが、選択発明成立の前提になるものと思います。

 

 また、実施可能要件違反やサポート要件違反といった記載要件の不備を解消するために後出し実験データに頼るのもリスクがあります。後出し実験データの参酌を許容する理由:「出願人が出願当時には将来にどのような引用発明と比較検討されるのかを知り得ないこと」と記載要件とは親和性が乏しいですね。

 

 有効性とリスクを理解した上で、後出し実験データの利用を検討していく必要があります。