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「方法発明」と「物の用途発明」の違いは? 審査段階~権利行使の場面を考える(第3回)

 話を単純にするため、以下では、医薬や機能性食品以外の分野を想定して話を進めます。

 これまで述べてきた通り、日本では、「物の用途発明」が広く認められていますが、世界的には珍しいことです。逆に言えば、諸外国(特に米国、欧州、中国などの主要国)で「物の用途発明」を権利化しようとしても、用途限定は物の発明の限定要素として事実上考慮されません。したがって、物自体が公知なら権利化できません。すると何が起こるでしょうか。

 拒絶理由が通知され、その応答において、「物の用途発明」を、「方法発明」(単純方法クレーム、製法クレーム、使用クレームなど)に書き換える必要がでてきます。また、この書き換えが拒絶理由への応答時にスムーズに出来れば良いのですが、例えば米国では、この書き換えは許容されないことが多いのではないでしょうか。「物の用途発明」をカテゴリーの異なる「方法発明」に書き換えて権利化するには、米国では通常、分割出願が必要になります。結果、コストが嵩みます。この点、最初から方法発明をメインとしたクレーム構成で外国出願をしておけば、スムーズな権利化に繋がります。上記の書き換えは、医薬発明や機能性食品の発明では、外国への移行時に各国の実務に応じて普通に行われていることと思います。しかし、化学・材料系の発明では、あまり意識されていない印象を受けます。

 以上、3回にわたり「方法発明」と「物の用途発明」について考察してきました。あくまで事案・事情・出願予定国等に応じてということになりますが、少なくとも医薬や機能性食品の分野以外では、物が公知であって、当該物の適用に特徴がある発明は、「物」の発明(物の用途発明)としての権利化には必ずしも拘らなくてよいケースがあるのかと思います。